わたしのことなんて好きじゃないくせに。
私のことなんて好きじゃないくせに。
私のことなんて本気で好きじゃないくせに、なんで、そんなに優しく髪に触れるの?
なんで、そんな愛しそうに私を映すの?
翔太の奥底には彼女の存在があるのに。
私は翔太の欲のはけ口でしかないのに。
この目に映る私が嬉しくて、翔太の奥底にあるものから目をそらしても、甘い甘いキスを求めてしまう。
ゆっくり近づく翔太の顔に、私もゆっくり瞳を閉じて、与えられる甘いキスと熱を含んだ息を求めて絡める。
閉じてしまえば見なくて済むから。
閉じてしまえば見えないものだから。
だから、今だけはここにある翔太を私だけのものにしてもいい?
天罰が下ったんだと思う。
そう感じた。
彼女の手と手を繋ぎ、嬉しそうに顔を見つめる甘い翔太の顔が本物で、それを呆然と見つめる私の姿が現実だって。
翔太が与える甘い夜はわたしの部屋でしか見れない幻想で、それを現実世界に持ち込んだわたしに天罰がくだった。
それでも、涙でにじんで視界がゆがむのに、その場から目をそらせないの。
わかっていた、傷つくことも。
わかっていた、自分が最低なことも。
一番になりたい、彼女になりたいと本気で思ったことない。
彼女を好きな翔太を好きになったんだもん。
惚れた方が負けでしょ?
それだったら、負けでもいいから翔太を好きでいたい。
人を好きになるって苦しい思いも辛い思いも経験するものでしょ?
罰なら私が全部受けるから。
彼女を裏切っている罰ならいくらでも受けるから。
だから、翔太と彼女の幸せだけは壊さないで。
翔太から彼女を奪わないで、彼女から翔太を奪わないで、
ほんの少しの幻想と、翔太を好きな気持ちだけで私は十分です。
だから…
「---っ…う、っ…」
涙、早く止まってーーー
この恋を続けるに、翔太にいくつもの嘘をつかなければいけない。
『傷ついてないよ』
『私のことは本気で好きじゃないんでしょ』
『私だって翔太のことを、本気じゃないから』
だから、
好きでいさせて。
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