「まるで雲を掴んだ心持ちである」と署長は述べた。
その日、ルピシエ市警察署はとうとう、"魔薬"の存在を公に認めてしまったのだ。
舞台は貴族社会が根強く残る街、ルピシエ市。
そこでは常識では考えられない力を持った人間による犯罪が起こっていた。
炎を自在に操り、他人の心を読み、家をも壊す怪力、影を、重力すらも操る、そういう人間。
その有り得ない力全てが、ある薬を服用して得た効力であると発表されたのだ。
それが『魔薬』という、未知の化学によって作られた、摩訶不思議で不可能を可能とする悪魔の薬だった。
その魔薬を服用した"服用者"による犯罪は苛烈を極めるも、悪魔相手に市民はおろか秩序を守る警察ですら無力と化し為す術もない。
そうして対抗策すら見つからないままに、あの史上最大の悲劇と言わしめた大事件が起きてしまった。
それが、『アヘン事件』
傾国の薬物の名を付けられた魔薬の効力は"他人を意のままに操る"というもの。
それは、最も恐れるべき魔薬の出現であった。
その日、アヘンの服用者に操られた市民達は自身の意図に反して人々を殺して回った。そして自決させられた。それが人を、命を、弄びたった3時間で数百人もの死者を出した史上最悪のテロ事件、『アヘン事件』である。
この後に行われたのが、先の署長の会見だった。
そして、署長は魔薬の存在に続き、対魔薬専門の捜査組織、魔薬取締班の結成を発表した。
通称『C.A.T.』
謎に包まれているこの組織で、唯一公表されていることは、自らも服用者となった警官2名で構成されているということ。
目には目を、とはよく言ったもの。
毒で毒を制すのだ。
時は流れ、
アヘン事件は犯人どころか、アヘンすら押収できないままに3年の時が経過した。
人々は、魔薬に嫌悪感を募らせながらも慣れすら感じ始めていた。
そんな中 新人刑事のエマには、非服用者ながら『C.A.T.』へ配属が命じられる。
C.A.T.の噂は聞いている。力の為に自分の意思で人間を辞めた連中。街に蔓延る犯罪者 同様、悪魔と化した服用者。石を投げられる存在…
だが、確かに人であるのだと、エマは後に知ることとなる。
そしてC.A.T.を通じ魔薬に、服用者に、そしてアヘン事件の真相に辿り着いた時、エマはこの街の真実を目の当たりにする事となる。
『マトリックズ: マトリックズ:ルピシエ市警察魔薬取締班のクズ達』をシナリオ化したものです。