90日後に死ぬ勇者(と腹黒い魔法使い)

作者きなこ大豆

 魔王討伐に成功した勇者だったが、魔王に「道連れの呪い」をかけられ、90日後の死へのカウントダウンが始まる。呪いを解こうと奮闘する魔法使いとは裏腹に、他の者は勇者の死を受け入れている姿を尊重し、呪いは着実に進行していく。魔法使いは魔王が復活すれば呪いを無効化できるかもしれないと、秘密裏に魔王復活を…

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物語全体のあらすじ


 魔王討伐に成功した勇者一行だったが、その際、勇者が魔王に「道連れの呪い」をかけられ、90日後の死へのカウントダウンが始まる。

 呪いを解こうとする魔法使いとは裏腹に、勇者は魔王を倒して燃え尽き症候群真っ最中で、満足したのか毎日のほほんと暮している。戦士はそんな勇者を連れ立って魔物の残党狩りに出かけるし、僧侶はそれならせめて子種をと勇者に迫るしで、呪いは進行していく一方であった。

 そんな中、一人奮闘する魔法使いは師匠である賢者の許を訪れ、助力を乞う。

 賢者の力を持ってしても「道連れの呪い」は解呪できるものではなかったが、「道連れの呪い」であるが故に魔王そのものが復活すれば無効化できる可能性があると告げる。

 そして魔法使いは、勇者一行にバレないように秘密裏に魔王復活を画策し始める。

 魔王を復活させ、かつ討伐では再び呪いをかけられてしまう可能性があるため、封印するように誘導しなければならない。あの勇者では魔王を再び討伐してしまうかもしれない。いや、その可能性が高い。

 そのために魔王の依代である少年を見つけ出し、魔王のレガリアを修復し、弱体化した四天王を一から鍛え上げていく。

 しかし、魔王に復活の兆しありとの噂が広まり、勇者が再びやる気をとり戻してしまう。

 魔法使いは勇者一行と魔王軍との間を行ったり来たりして、何とか衝突を回避しようとする。

 そこで偽勇者の悪行の噂を流して勇者の目を逸らすことを思いつく。

 その間に魔王の配下の魔物たちを手懐け、懐柔し、恫喝し、さながら鬼軍曹のように魔法使いは魔王軍を育て上げていく。

 しかし魔法使いが必死に育てた魔王の軍勢は、勇者が手加減した状態で蹴散らされ、討伐すらされずに解散を命じられるほどに弱く、無残に敗れ去っていく。

 そこで魔法使いは思いつく。

 いっそのこと、自分が魔王になってしまえばいいんじゃないのだろうかと。