三日後のまじない師は後宮を駆ける

作者二月 宴

物語全体のあらすじ


 大陸東部に位置するりょう国。

 見鬼の才を持つ芦深ルーシェンは、北方の名門、イェン家の末娘雪麗シュエリーに仕えていた。

 一五歳になった雪麗は、先年即位した皇帝の後宮に入ることになり、芦深も侍女として伴うことになる。

 しかし後宮は、辺境の中の辺境と言われる故郷の村よりも、とんでもない場所だった。

 最初の夜、玄芳宮にやって来たのは皇帝の耀明ではなく、皇帝に化けた狸だった。

 それを見抜いた芦深を止めたのは、見鬼の才を持ち、術師になるつもりでいた、という耀明の叔父であり、補佐の秋英しゅうえいと、狸姿の耀明ようめいだった。

 耀明は、父である先帝の妃の呪いを受け、日暮れと共に狸になってしまうため、夜の間だけ、秋英の友人で、大食いの化け狸ファランが皇帝の身代わりを務めているのだという。


 駆け落ちした貴妃に化けて後宮入りしている化け猫、人の姿で、芦深の同僚として働くことになる人形。

 先帝の妃が残した呪いから、未だ逃れることができない後宮。

 この世で最も尊い雪麗さえ幸せであれば、他はどうでも良いと考えている芦深の元に、数々の厄介ごとが舞い込んでくる。