一冊の小説が繋げる愛欲

作者Licht-リヒト-

 休日の昼下がり、その日は雨が降っていた。17歳の女子高生・音羽がカフェでバイトしていると常連である永介が訪れる。彼はIT企業の社長を務めており多忙な日々を送っていた。音羽は父を物心つく前に亡くしており、永介に父の面影を重ねていた。永介はコーヒーを飲み終わると早々に席を立ち、店を出る。その時、外に…

物語全体のあらすじ

 現代の日本。学校の近くにあるカフェでアルバイトしている17歳の女子高生、音羽オトハ。彼女は常連であるIT企業の社長、永介エイスケに亡き父の姿を重ねていた。そんなある日、永介が傘を忘れた事に気づいた音羽は急いで彼を追いかける。幸い永介は遠くまで行っておらず、無事に傘を渡す事が出来た。その時、音羽の目に一冊の本が目に止まる。それは音羽の亡き父が書いた最初で最後の小説だった。その本について音羽が聞くと永介は本を片手に持って柔らかな笑みを浮かべながら「大切な人が読んでいた」と語る。音羽は父の小説を読んでくれている人がいるんだと喜び、自分も小説家志望だと伝える。それを聞いた永介は冗談交じりに「君の小説も読みたい」と笑う。音羽は元気よく「もちろんです」と返事をすると店へと戻って行った。

 翌日から音羽は小説を書くにあたって永介にどんなジャンルを好むかなど聞き二人の距離は少しずつだが縮まっていく。しかし高校生の身である音羽は学校の試験が近い事もあり、小説の執筆も出来ずバイトにも出られない日が続いた。音羽の姿がない事に気づいた永介はマスターに事情を聞く。マスターは永介に試験がある事や、彼女の父親について話す。それを聞いた永介は病気で亡くなった彼女の事を思い返していた。試験が終わりようやくバイト復帰できた音羽だったが、永介の姿がなく意気消沈してしまう。その様子を見た店のマスターは永介と似ているなと感じながら、彼の昔を聞かせる(病気で亡くなった彼女の話)。マスターの話を聞いて自分と似ていると感じる音羽。お互い大切な人を失った事がある共通点や亡き父の書いた小説によって交流が生まれた自分達。音羽はこれを運命にように感じ、小説を書き進めるのだった