休日の昼下がり、その日は雨が降っていた。17歳の女子高生・音羽がカフェでバイトしていると常連である永介が訪れる。彼はIT企業の社長を務めており多忙な日々を送っていた。音羽は父を物心つく前に亡くしており、永介に父の面影を重ねていた。永介はコーヒーを飲み終わると早々に席を立ち、店を出る。その時、外には日が射しこんでいて永介は傘の存在を忘れていた。永介の忘れ物に気づいた音羽は、すぐに彼を追いかける。幸い彼は遠くまで行っておらず音羽は傘を渡すことが出来た。永介は彼女のことをマスターから聞いていたのもあり、感謝を述べる。自分を覚えていてくれたことに喜びを感じる音羽の視界に一冊の小説が目に入る。それは音羽の亡き父が書いた小説だった。どうして持っているのかと音羽は永介に問う。永介は言葉を濁しながら「大切な人が読んでいた」と語る。音羽は父の小説を読んでくれる人もいるんだと喜び、自分も小説家志望だと伝える。それを聞いた永介は冗談交じりに「じゃあ今度、君が書いた小説を読ませてもらおうかな」と言う。音羽は元気よく「もちろんです」と返事をして店に戻って行った。
この出来事をきっかけに、全く接点のなかった音羽と永介はお互いが抱える傷に気づき心が惹かれ合っていく。