『今にも死にそうな先輩の話』
僕が唯一持っている『死』を全て、美しくて、どこか厭世的な君のために使えたら、どんなにいいだろうか。
──もっと堕ちてきて、一等星。それで、ずっと僕の隣にいてくれたらいい。
彼女が、僕からゆっくりと唇を離す。そして、切なそうな、掠れた声で僕を呼んだ。
「せんぱい」
彼女とのキスは、甘い毒を口移しされたみたいに思考が蕩けて、何も考えられなくなるから嫌いだ。
僕にはもう、彼女のこと以外何も考えられそうにない。
『今すぐに死にたい後輩の話』
気持ちの良い春風が吹く日に、深夜2時の街中みたいな空気を纏った、先輩に出会った。先輩は、夜の空気を持っている人だった。
それ以来ずっと、私は先輩に縋って生きている。
──ねぇ、先輩。このまま先輩が、私の生きる理由になってくれてもいいですよ。
先輩はいつも冷たすぎて話しかけられないから、私は想いを注ぎ込むようにキスをする。そうやって、先輩の地獄を少しだけ貰ってあげる。
「せんぱい」
このまま、私が本当はもう死にたがっていないことがバレませんように。