フロル・ネージュの街の歌【完】

作者sakiura

おとぎ話は壊れてしまった。
魔法は解けて、残ったのは惨めなドレス。
そこに現れた美しい男は王子様どころか、わたしの目の前で冬の池に飛び込もうとした。

十六歳、初冬。
人生を賭けてきた夢に破れて自分を見失い、失意の中過ごしてきたユキの日常が、入水自殺しようとした美しい青年を止めた時から変わりはじめ…

歌の才能だけが頼りだった。

わたしには人魚の両親からもらったそれだけしかなかった。



十六歳、冬。

子どもからおとなへなりたかったユキは、自分の才能がまやかしであったことを知る。


自身への失望と、拠り所を失った心細さ。

救ってくれたのは、真夜中の池で投身自殺を目論んでいた(ように見えた)美しい青年で……


「舞台の上でなら、どんなおとぎ話も本物にできる。それが、わたしがたったひとつだけ神さまに与えられた、本当の魔法」



愛なんて嘘つきの言い訳だって、そう思っていた。

でも、真実の愛だって、ほんとうにあるのかもしれない。


息をのむほどうつくしい青年の、海色のひとみには、もしかしたらそれが宿っていた。