オアシスの民、ドゥーヤ族の乙女ナディアは、残虐非道で強欲な権力者に見初められ今宵まさにその清い身体を奪われんとしていた。嘆くナディアの元にあらわれた影の男、盗賊王ジャミール。「願い通り、攫いに来たぞ」漆黒の美丈夫の正体は、かつて使用人としてナディアの家に仕えていた青年だった。夜の砂漠を越…もっと見る
その晩、生まれに秘密をもつ盗賊は、荒涼の砂漠を馬で駆けた。
あわれな花嫁は窓辺に立ってひとり深いため息をつき
声を失った神官は瞑想をやめ、瞼をあげた。
――星がめぐる。
運命という名の星が、いま。