白いシャツの少年 【恋に焦がれて鳴く蝉よりも・番外編】

作者橘 弥久莉

真面目すぎて少々堅苦しい印象を
与える世界史の教師、高山千沙には
密かに心を寄せる相手がいる。
7つ年下の幼馴染であり、この学園
きっての秀才、蘇芳侑久。彼には壮大
な夢があり、そして千沙には父親に引
き合わされた恋人がいた。世間一般の
物指しにそぐわない想いから目を逸ら
そうとしていた千沙は、あ…

 天満月を背に、少年が振り返る。


 白いシャツの眩しさに、

向けられる笑みのやさしさに、

とくりと鼓動が鳴ってしまう。


 「子ども扱いすんな」


 少し低くなったその声にまた、

いままで知らなかった彼を見つける。


 心が色づき始めるのを意識しながら、

私は姉の笑みを向けた。



*………………*………………*


《登場人物》


・高山 千沙(たかやま ちさ)

藤ノ森英明学園の世界史の教師。父親

は学園の理事長であり、千沙は学園の

後継ぎとして結婚相手を決められてい

る。セルフフレームのだて眼鏡に、

七三分けの前髪がトレードマーク。


・蘇芳 侑久(すおう たすく)

千沙の幼馴染みであり、学園きっての

秀才。T大、宇宙工学科への推薦入学

が決まっており、将来は宇宙航空開発

に携わりたいという夢がある。


・高山 智花(たかやま ともか)

千沙の妹。侑久とは幼馴染みであり、

同級生。千里とは正反対の容姿と性格

を持ち、周囲からは侑久との恋仲を噂

されている。


・御堂 弘光(みどう ひろみつ)

藤ノ森英明学園の数学教師で、生徒か

ら「死神博士」と呼ばれている。千沙

との結婚に前向きで、積極的に距離を

縮めようとしている。


*****


・折原 蛍里 (おりはら ほとり)

サカキグループの経理部で働いている。

読書好きが高じてアマチュア作家であ

る詩乃守人の小説サイトに出会う。が、

のちに榊一久がその小説サイトの管理

人であることを知り、芽生えていた

恋心を断ち切る。その後、作家となっ

た一久と再会を果たして……。


・榊 一久 (さかき かずひさ)

サカキグループの後取りであり、社長、

榊幸四郎の養子。専務職に就いていた

が、政略結婚の相手である秋元紫月と

の婚約解消を機に専務の職を辞する。

その後、詩乃守人として作家デビュー

を果たし蛍里と再会。




※この物語はフィクションです。

※表紙画像はM・H様からお借りした

ものを、本人から了承を得て使用して

います。

※この物語は「恋に焦がれて鳴く蝉よ

りも」の番外編です。そのまま読んで

もお楽しみいただけますが、本編をお

読みいただいた方が、より、楽しめる

かと思います。