天満月を背に、少年が振り返る。
白いシャツの眩しさに、
向けられる笑みのやさしさに、
とくりと鼓動が鳴ってしまう。
「子ども扱いすんな」
少し低くなったその声にまた、
いままで知らなかった彼を見つける。
心が色づき始めるのを意識しながら、
私は姉の笑みを向けた。
*………………*………………*
《登場人物》
・高山 千沙(たかやま ちさ)
藤ノ森英明学園の世界史の教師。父親
は学園の理事長であり、千沙は学園の
後継ぎとして結婚相手を決められてい
る。セルフフレームのだて眼鏡に、
七三分けの前髪がトレードマーク。
・蘇芳 侑久(すおう たすく)
千沙の幼馴染みであり、学園きっての
秀才。T大、宇宙工学科への推薦入学
が決まっており、将来は宇宙航空開発
に携わりたいという夢がある。
・高山 智花(たかやま ともか)
千沙の妹。侑久とは幼馴染みであり、
同級生。千里とは正反対の容姿と性格
を持ち、周囲からは侑久との恋仲を噂
されている。
・御堂 弘光(みどう ひろみつ)
藤ノ森英明学園の数学教師で、生徒か
ら「死神博士」と呼ばれている。千沙
との結婚に前向きで、積極的に距離を
縮めようとしている。
*****
・折原 蛍里 (おりはら ほとり)
サカキグループの経理部で働いている。
読書好きが高じてアマチュア作家であ
る詩乃守人の小説サイトに出会う。が、
のちに榊一久がその小説サイトの管理
人であることを知り、芽生えていた
恋心を断ち切る。その後、作家となっ
た一久と再会を果たして……。
・榊 一久 (さかき かずひさ)
サカキグループの後取りであり、社長、
榊幸四郎の養子。専務職に就いていた
が、政略結婚の相手である秋元紫月と
の婚約解消を機に専務の職を辞する。
その後、詩乃守人として作家デビュー
を果たし蛍里と再会。
※この物語はフィクションです。
※表紙画像はM・H様からお借りした
ものを、本人から了承を得て使用して
います。
※この物語は「恋に焦がれて鳴く蝉よ
りも」の番外編です。そのまま読んで
もお楽しみいただけますが、本編をお
読みいただいた方が、より、楽しめる
かと思います。