国立大学の教務課で働く桜井満留は、病床に臥す母親を抱えながらひとり、鬱々とした日々を過ごしていた。余命幾ばくもない母のため、大学と同一敷地内に隣接する国立病院に泊まり込みで看病をしていた満留は、ある夜、お化けが出ると噂のある中庭で一人の少年と出会う。半年前に亡くなった祖母を想いなが…もっと見る
「出会いは必然。別れも必然。
だから、何げない出会いを大切にね」
やわらかな陽だまりの中で、母がふわり
と笑う。私は小さく頷くと、うっすらと痣
の残る母の手を包み込んだ。