「―――真斗ちゃんも亜末ちゃんも、もう寝ました」
そう言って、妻はダイニングキッチン・リビングに入ってくると、
『宗一郎さん、話があります』と、キッチン棚の引き出しから【離婚届】を
取り出してきて、ダイニングテーブル前に座る俺の前に座り、それを突き出してきた。
俺に何の落ち度があったのだろうか……。
考えても考えても思い当たる節などなかった。
仕事も真面目にこなしてきた。小さなゲーム会社を3Dインターネット通信企業大手ゲーム会社までにしたのはこの俺だ。この企画が上層部に認められて副社長にまで昇進したというのに、なのに……なぜだ? 全ては妻や子供達の為じゃないか……。仕事に没頭しすぎて、家庭や妻のことを
君はこれ以上俺に何を望んでいる?
お金か? それとも身体か?
俺が社長にでもなれば君は満足するのか?
君の身体をもっと、もっと愛撫すればよかったのか?
それとも、俺のキスが悪かったのか? 口の臭いがしたのだろうか?
いや、それはないはずだ。俺は夜の営みをする前にはキチンと歯磨きは念入りにしていたし、エチケットケアだってしていた。
それに若い時から現在に至って俺のキスが嫌だって言う女性はいなかった。
「俺の何が不服なんだ…」
「あなたは子供達には優しいわ。でも、私の心までは満たせなかったの」
「え」
やはり、身体の相性かあ。いや、心の相性?
「あなたが欲しかったのは、あの子達の母親になってくれる人です。 やっぱり、私はあの子達の母親にはなれません。離婚してください」
「大丈夫だよ。そのうち、あの子達も君になついてくれるから」
「ごめんなさい、私のお腹には彼の子供がいるんです」
「え……」
離婚の原因は妻の浮気だった―ー―ー。
しかも、妻のお腹には浮気相手の子供がいるーーーー。
俺に落ち度があるとするなら、妻との間に子供を作ろうとしなかったことだ……。
俺はすでに書かれた妻の名前の隣欄から順に向かって名前、住所、その他必要項目を書いた後、妻に言われるままにハンコを押した――――ーーーー。
これで3度目の離婚が成立した――――――ーーーーー。