繋がれたきみの手は、陽だまりのよう。

作者水月つゆ

自分のことをダメなやつ、情けないやつだと思っている主人公、深海浬(ふかみかいり)。図書館で出会った女の子、木崎茜音(きざきあかね)と関わっていくうちに、少しずつ変化が訪れてゆく。友情に家族に、そして大切な何かを気づかされていき全てが順調に進んでいると思っていた。けれど、彼女には大きな秘密があって……

俺は何をやってもうまくいかない。



人と同じようにすることができなくて、

いつも、みんなの背中ばかり見ていた。



待って、と手を差し伸ばしても



誰もその手を掴んでくれる人はいない。


“大丈夫”?と心配してくれる人はいない。



俺は、そのとき初めて誰からも

必要とされていないのだと気がついた。



もしかしたらみんなから俺のことは

見えていなかったのかもしれない、と。




──けれど、きみだけは違った。



きみだけが、

俺の手を強く握り返してくれた。



そのとき、きみの手は

とても、とても、温かかったんだ。