蒼井は分かり合えないと気づくや否や、やれやれと肩をすくませた。
「これだから有村君は」
「そんなん言われても」
「一応言っておくと、有村君が曽根さんに言い寄ろうが僕は関知しない、好きにすると良いよ」
「えー?」
曽根は蒼井のことを気にしてるんだぞ、とは言いたくても言えなかった。負けた気がするし、曽根の心を勝手に代弁することも気が引けた。
蒼井はたいがい朴念仁で、曽根に大して興味もないらしい。
恋のキューピッドになるなんて真っ平御免なので、「じゃあ好きにする」と返答した。
こんなチャンスはもう二度と来ないかもしれないのに、蒼井は全く気付くことなくふいにしようとしている。いい気味だと思うのと同時に、曽根が気の毒なような気がした。
「じゃあな有村君、せっかくの夏休みなんだ、可愛い彼女と過ごせると良いな」
「そっちもな!」
蒼井はにやにやとしながら部屋を出て行った。
もし蒼井に彼女が出来たら、ことあるごとに「有村君には彼女がいないんだったなははは」なんて言われそうなので、一生彼女なんて出来なければ良いのだと呪っておくことにした。