短編小説「おはよう。」

作者村木野 惠

僕は新型コロナのせいで仕事を解雇されてしまったけれど、その前に僕の周りに起きたことを話さなければいけないと思う。しばらく僕はその芳しい匂いがどこからもたらされるのか知らないでいた。約半年が経った(それに気づくのに半年もかかったのだ)ある日、ホームで僕はいつものように電車を待ってしばらく佇んでいた。…

①表紙


▶ストーリー概要および物語の設定

  「おはよう。」が空から降ってくるってあるのかな?僕はそのころ通勤コースとして、近鉄を乗り換えればJR大阪東線の永和駅から新加美駅までを毎日のように通勤電車に乗って通っていた。解雇されるまでは。新型コロナという風が吹いたからだった。それでも僕は通勤コースは変えたくなかった。あの芳しい香りがいつも僕の周辺にあって、僕をいつも刺激し続けていてくれたから。  

それは毎日続くわけではなかったけれど、消えてしまうこともなかった。通勤して半年ほどはその香りの出どころがどこなのか僕は知らなかった。ある日女性が発散するその植物性の匂いとでもいえるようなものが僕の身近なところで漂っていたことに気づいたのだった。僕はまだ通勤コースは変えずにいたが、女性が姿を見せなくなった。その女性が再び僕の目の前に現れて、「おはよう。」の声とともに芳しい匂いを発散させながら近づいて来たのはほんとに今から思えば偶然だった。



▶(小説作品のコミック原作化の場合)元小説の作品URL

(※他社サービスで投稿済みの小説作品の場合も、応募は可能です。→note.com に掲載中です。)