髙橋さんと黒い猫

作者ナザリオ

これは、僕が初めてのアルバイトで100均の店員として働いていた頃の話。



「おはようございます」



猫の後ろ姿が白いラインでデザインされた黒いのトートバッグ。

赤縁のメガネ。

黒いパーカーにクリーム色のボーダーシャツ。



ーーそして。



頭上に乗ったまん丸の黒い毛玉。



(あ、今日もいる。)



「おはよう、ございます」



合わない視線。

通り過ぎていく後ろ姿。



「悪い人では、ないんだけどなぁ……」



その方はかなりの人見知りのようで、視線が合う事がかなり少ない。


その代わり、頭に乗った毛玉が少し振り返ってフリフリと尻尾を振って挨拶をくれる。




そう、これは人ではない何かが見える僕だけの秘密だ。