「私」が高校生の頃に、おじいちゃんが死んだ。パン屋だったおじいちゃんのパンを食べなくなってから、5年が過ぎた頃だった。久しぶりに訪れたおじいちゃんのパン屋からは、焼きたてパンの香りはしない。けれど、厨房はそのまま残っていて――パンの香りと「私」と祖父母との、思い出のお話。