【完結】カナリア、カナリア、愛しい男の籠の中で囀って

作者東川 カンナ

「助けて、私を連れてって」
街の支配者と小さな舞台の歌い手。男の庇護下に入ったその日から、少女の世界は一変する。望んで入った鳥籠はとてもとても甘い空間ーーのはず

「俺に助けを請うってことは、俺のものになるってことだよ。分かるか、お前の爪の先髪の一筋まで、もう全部全部俺のものだ」



 大歓楽街・クレナダ。

 その片隅にある中規模の劇場。

 お酒と音楽で人を酔わせ、一時現実を忘れさせる淡い夢の世界。



 少女リゼットの居場所はそこにあった。

 いつの日か大きな舞台を夢見ながら、毎夜その歌声を響かせていた。



 けれどそんな生活は、ある日ヤバげな取引現場を目撃してしまったことで一変する。



 口封じに殺されそうになった彼女を助け出したのは、街を支配するグルナ商会のトップ・レゾン。

 それはいつの日からか恋焦がれていた、特別な男。



 男の庇護下に入ってから、リゼットの暮らしは一変する。

 


「リゼット、俺のカナリア。その可愛い囀りを聞かせてくれ」



 甘い甘い糖蜜漬けのような日々は、けれどどこかほの暗く重い執着にまみれていて――――




 ――――逃げることは、もう許されないのだ。