【完】甘く歪な存在証明~私の居場所は男の腕の中にだけ~

作者東川 カンナ

借金チャラの条件は、とある極道の家のお嬢の影武者をすること。
ならず者の男と始める甘くヒリつく奇妙な生活。
"本当の私"は男の腕の中でしか存在できない。




 理不尽にも親に背負わされた巨額の借金。

 待つは地獄ばかりの楡木にれきしのの前に現れたのは、派手な金髪に関西弁のいやに目立つヤクザの男だった。




「お前に選ばせたるわ」

「好きな方の地獄を選び」




 借金チャラと引き換えに要求されたのは、奇妙なくらいに瓜二つの顔をした時任ときとう組のお嬢・あやめの影武者。



 名前を、姿を偽り、本物のお嬢の身代わりとなるのが役目。

 "楡木しの"なんて人間はもうどこにもいない。




「あぁ、可愛えなぁ、ほんま堪らんわ。しの、しの、しの」




 ーーーー男の腕の中以外には。




 偽物、身代わり、紛い物。

 いつか捨てられるとそう思いながらも、少女は今日も男が自分の名を甘く呼ぶその声に溺れて行くーーーー