日下奈緒
その感情は何だったのか
大陸に出兵した兵士と、その兵士を待ち続けた女郎。
お互い、悲惨な世界で生きてきて、兵士は女郎を迎えに行く為に生き続け、女郎は迎えに来る兵士を待つ為に、生き続けた。
それがいつか、生きる糧になっていたのは見物で、逞しいと言うよりは、いじらしく、人間の強さを見せられた気がしました。
兵士は生きる為に、物乞いになった事も、女郎は生きる為にお偉いさんとの結婚を選んだ。
そんな虚しい、やるせない行動でさえ、二人の強い想いに繋がっているのだと思います。
だからこそ、最後。
兵士の一言が、何を意味するのか。
女郎を奪ったお偉いさんへの嫉妬なのか、待っていてくれなかった女郎さんへの憎しみなのか。
それとも、全て無くなってしまった事への虚無感だったのか。
いろんな意味を考えさせられて、心に残る作品となりました。