星崎すず
夢幻の恋と花弁
発想と構成が素晴らしいです。
序盤の二人の会話が軽快なだけに、終盤の文学的な描写がより大きな感動を呼びます。
いまひとつ素直になれず不器用なカイロの「お前にとっては向こうが居場所なのかよ」という心の声は胸に深く染みました。
実体を失う悲しみを払うような無邪気な彼女の言動、二度目に味わう彼の落涙の音…こちらも涙せずにはいられません。
仮に生きた者同士であろうと、夢幻泡影の世。
恋情そのものが空気に似た儚いものかもしれません。
その泡沫の中で一人歩く準備をするカイロの姿は悲しいものの、どこか爽やかな印象もあります。
素敵な作品です。