NAO

愛しい彼女
死んだ彼女がいきなり幽霊となって目の前に現れた。
幽霊である彼女と接することができる時間は残り僅か。
その限りある時間の中で、現在と過去の彼女との出会いの記憶とを交錯させながら、物語は進んでいきます。

きっとカイロは、彼女との出会いを遡りながら、彼女の死を受け入れる準備をしていたのかもしれません。

もう一度、一から彼女を思い出し、少しずつ恋に堕ちていく毎日を振り返り、そして、最後に彼女を葬り去る、そんなカイロの一連の心の儀式の物語だったように、感じます。

カイロの口調は常に淡々としていて、それが彼の抑えた切なさをより際立たせていました。

彼女がどんどん大切になって、どんどん目が離せなくなる

それが恐いと言ったカイロ。

そしてその気持ちが、最後に最大に的中したと言ったカイロは、彼女を心の底から、好きだったのでしょう。

愛する人の喪失は、誰だって悲しい。

桜の花びらの色がどうか、優しいセピア色に朽ちることを、私は祈りたいと思いました。