珊瑚島

流れない涙
彼女が帰還した。
期間付きで。

何気ない会話を続ける中で、彼女への想いを再確認し、彼女を愛しむカイロ。
文字からその愛おしさが溢れ出ていたのが印象的でした。

繊細な心の機微が、奏でるように描き出された作品です。
映像として、芸術として、そして作者の構築した世界を覗く媒体として。
ゆっくりとじんわりと愉しむことのできる作品だと感じました。

時折混じる落ち着いた二人のシーンが、二人の気持ちをより浮き彫りにしていて、だからこそ何気ない二人の姿を見守るこちらの心に切なさが零れる。
彼が涙を流さない分、こちらが泣きそうになる。

あの薄桃色の花びらひとひら、どうか優しく彼を包みこみ、やがて静かに褪せんことを。

読み終わったその時、きっとあなたも愛しい人に会いたくなることでしょう。
ぜひ読んでみてください。