Cherry snow 前編～Last season～《完》

みんな大人になっていく 太郎先輩との温かい毎日に、大切な居場所。 だけど何も変わらない太郎先輩との距離に、不安になる。 そんなユリの気持ちが痛いぐらいに伝わって来ました。 だけどそんな二人だからこその空気があって、それがヒロトの時とも奏の時とも全く違うのが、すごく二人らしいなと思いながら読んでいました。 太郎先輩もユリの気持ちをすごく分かっていて、だけどヤキモチ妬いたりする姿がとても可愛くて好きです。 恋に生きたヒロトや奏との時とは違っても、それも恋なんだとすごく伝わって来ました。 ヒロトと再開して、ユリに対して変わってしまったヒロトがすごくショックでした。 でも、この８年間ヒロトにもヒロトの時間があって、成人式の日にヒロトの勘違いでユリに絶望してしまった気持ちがあって、だからこそ仕方ないのかな、とか彼女を大切に思う気持ちとか、そういうのでヒロトとこうなってしまうのは仕方ないと思って読んでました。 だけど、二人で一つのものを作り上げる。 それが二人にとってすごくいいきっかけで、ユリの想いもヒロトの想いも、前に進めてよかったと思います。 続きが楽しみです。

触れた強さは優しくなる ぐるぐると目まぐるしい波の中に飲み込まれた前作とは打って変わって、穏やかな太郎先輩との毎日、そしてイヴの一瞬の幻、再会、戸惑い、また新しい朝が来て… 人物の心の動き、あまりに繊細で優しいテンポです。特にユリは本当に成長したと…受け身で、周りが見えないところのあったユリだけど、きちんと大人になったような、でもまだあどけない少女のような。ヒロトとの再会はドラマチックのようでいてそれはその偶然だけで、彼の態度も、距離感も、至極現実味のあるものでした。ゆっくり、ゆっくり。でも確かに笑いあえたのは他でもないユリの歩み寄りもあったからで、過去と向き合ってきた結果で。 甘ったるい展開はない、ただ、絶望的な世界でもない。光で満ちてはいないけど、探せばある、皆は探した。平凡な世界は案外に良いものです。 ところで奏くんはどうしてあのように素敵な男なのでしょう。太郎先輩と結婚したら世界一幸せになれるでしょう。布団で一緒に寝たい寝たい寝たい。３人はとてもタイプの違う人達だったけれど、根底にあるものはきっと似ていて、だからこんなにもせつないんだなと。そしてやっぱりヒロトは素敵可愛格好良いです。

苦しいと切ないを感じるのは、今だから。 無意識の内にかなり感情移入してしまい、本音は読んでいて苦しかったです。これほどまでに感情移入したのは自身できっと初めて。 生温いもんじゃないよ、そんな厳しさが真っ直ぐに突き刺さり、思い出話なんてつまらないから、の空白が露呈された言葉に靄がかかったような、グレーな気持ちをユリと感じたり。 出来た大人じゃない、そんな、まだまだ未完成な子供の自分だから感じられた事だと思いました。 未来を惑う未完成な今、本当にこの作品に出会えた事に感謝。 みずみずしく美しい表現も期待以上。前作を見事に越えてくれました。 ラストシーンの美しい朝の様な後編、期待してます。