完璧な彼氏
私には彼氏がいる。
「おーっす」
「あ、おはよ」
こいつが自慢の彼氏。名前は涼。
運動神経抜群、頭脳明晰、容姿端麗。人望も厚い。
「あ!涼くん!おはよっ!」
「ねぇねぇ涼!今日カラオケ行こうよ〜」
…もう一度言う。こいつが、私の彼氏だ。
「今日?…まあ別にいいけど」
「ほんと!?やったぁ!!」
彼氏…のはずなんだけど…ね。
ご覧の通り、モテます。この男。
まあそうだよね。イケメンでスポーツも勉強も出来たらモテますよねそりゃあ。
でもさ、涼くん。あなた私の彼氏なら断りましょうよ!
えぇ!?それとも付き合ってるのは私の勘違いですか!?!?
「ねえ!?美紀!!そう思うでしょ!?」
「そうね〜」
いつものように友達の美紀に愚痴る。
美紀はいわゆるオタクで、2次元にしか興味が無いらしい。涼にベタベタしない、数少ない女の子だ。
「なーに話してんの〜?」
美紀にさらなる愚痴をこぼそうとすると、突然肩に重みを感じる。そちらに目を向けると、学級委員長の拓が私の肩に肘を乗せていた。
拓とは、去年も同じクラスだった。なので、男友達の中でも特に仲が良い。
「ちょ、聞いてよ拓!!」
「え、やだ。」
「え、そこは聞いてよ!」
「しょうがねぇなぁ〜、はいはい、聞きますよ〜」
いつもの調子で話をする。美紀はトイレ〜と言って席を立ったので、拓と2人で話をしているとずいぶんと話は盛り上がっていた。
「でさぁ〜」
いつの間にかイライラがなくなっていた私は、笑顔で話をする。
「え、なにそれうけるwwって痛った!」
突然、両頬を手で覆われ、首を思い切り横に向けられた。
何事!?と思っていると、そこには先程の楽しそうな顔とは裏腹な仏頂面の涼がいた。
「え、なに?」
「…」
問いかけても何も答えない涼。
…何を言いたいかは、わかってる。
涼のこの顔は、怒ってて、でも少し寂しいのを訴えてる顔。涼が黙って目を見てる時は、言わなくてもわかってほしいって意味。
で、その理由は…私が拓と仲良く話してるから。
第三者がその事情を知れば、自分だって女の子達と仲良く話してるじゃん!って思うかもしれない。
でも、私は彼が不器用な人間で、これが愛情表現だということがわかっているから。
「ごめんね、今日一緒にいつものとこ寄って帰ろっか」
「…ん」
涼の手を覆うように手を被せると、涼も素直に頷く。
ほんと、不器用で、可愛い。
「でもさ、私だって涼が他の女の子と遊ぶのとか嫌なんだよ?」
「…ごめん。でもお前も拓とばっか仲良くしてんじゃねぇよ。…お前は俺だけを見てろ」
…キュンときた。
最後のは私にしか聞こえないくらい小さな声だったけど、確かに聞こえた。
「うん。ごめんね」
「…ん」
運動神経抜群、頭脳明晰、容姿端麗、人望も厚くてモテて、ちょっと俺様な彼。
でもそんな彼が私は愛おしくてしかたがない。
おまけ
「ねえ、ここ教室だってわかってるかな、あのバカップルは」
「わかってないんじゃないかしら?」
「あ、美紀おかえり」
「ふぁ〜眠い。そしてリア充爆発しろ」
「それな」
「…私とカラオケ行くって約束したのに…」
「「どんまい」」