知里

じわじわ心に染みてくる。
この季節にピッタリだと思う。
私は野球について全然詳しくないけど、文章力の高さと雰囲気で楽しめた。

何だろう。

試合の時の話もだけど、普段の様子とかも鮮明に浮かんでくる。
この話、野球部のマネージャーさんが見るとかなり面白いんじゃないかな。

登場人物がすごく多いのに、一切キャラが被らないのは凄い。
恋愛要素もあるけどあからさまじゃない。
何と言うか、良い意味でじれったい。
でも、そのじれったさが凄く良い。

作中にいろんな魅せ場があって、その中でも印象的なのは248頁。
試合に負け落胆する部員と、呆然とする純。

『終わったの?』『まだ甲子園に行ってないのに?』

250頁で、終わったんだ、終わってしまったんだと、涙が出そうになった。

でも悲しい終わり方じゃない。
すごく曖昧に濁した終わりだけど、すごく未来に期待するような終わり方。

部活に恋に友情と、不器用ながらも前に進んでいく姿。
じわじわ心に染みてくるものがあって、すごく甲子園が見たくなった。
青春って言葉がピッタリ当てはまる、とても素敵な作品です。