アトム

吸い込まれるように思い出す。
普段は利用しない各駅停車に乗った唯子は、乗り合わせた人々の音に耳を澄ます。そして唯子はゆっくりとあの頃を思い出す――


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田舎の各駅停車の電車を利用したことある方なら分かる、揺られるとウトウトしちゃう暖かな日射しやのんびりするあの不思議な空間。
まるで自分が今乗車していると錯覚するくらいに、上手く描写されていてすぐ物語に入り込みました。

彼女が辿る甘酸っぱく切ない、そして色褪せることのない記憶が鮮明で、読んでいて私も学生の頃あんなことあったなぁ、と思い出して優しい気持ちになりました。

当たり前に起きるであろう日常なのに、どこかファンタジーな雰囲気が漂っているのがまた、この物語の素敵なところです。

間延びすることなく徐々に加速する物語で、読後のドキドキと目の前がパァッと開ける感じがたまりません。
『もしかしたら…』と続きを沢山考えるのがとても楽しいです。


素敵な作品をありがとうございました*