藤井 蛍
触れ合うことのない純愛
真っ白な雪と色鮮やかに紅く咲く椿の花。
その一つ一つの言葉から、情景がまざまざと浮かび上がります。
旧華族の一人娘として生まれた菫と、愛人の子で異国の血が混じっている冬夜。
立場すら大きく違えど、その心に潜む寂しさや孤独は同じ。
二人が惹かれ合うのは必然だったのかもしれません。
触れ合うこともなく、言葉で愛を確かめ合うこともなく、ただ寄り添い続けた二人。
二人の行く末に涙せずにはいられませんでした。
冬夜が椿に口付けるシーンは、本当に色っぽく、文章から感じる切なさや漂う静寂に圧倒されます。
胸を締め付けられるほどの切なさを味わえる、本格的な純愛作品です。