高瀬なるみ

彼女の心を染め上げた一色
旧華族の家に生まれたお嬢様の菫と庭師の息子で異国の血が混ざっている美しい容姿をした冬夜。
そんな二人は密かに逢瀬を重ねていたが――


前半はゆったりと流れる物語で、菫の家柄や冬夜の立場について知り、胸が痛みました。

外の世界を知らない菫が、冬夜と関わっている時は世界が広がったような、
色づいたように感じることが、読んでいて温かくなりました。

二人の会話のシーンの言葉選び、丁寧な描写で情景が浮かんでくるので表現がとても好きです。


立場だけに触れ合うことのない愛。だけど確実に大きくなっていた。

相手を好きだからこそ一緒にいたいという想い。
だけど大事だからこそ、幸せになってほしいと願う気持ち。

冬夜を思ってこその決断をした菫に、胸が痛みました。ラストは、本当に切なくて。

穏やかで独特の雰囲気で繰り広げられる物語ですが、いつの間にか世界観に入り込み、二人の幸せを願ってしまいます。

切なく美しい、という言葉がぴったりのお話です。

素敵なお話、本当にありがとうございました!