アトム

美しく残酷な物語。
旧華族の生まれで何不自由なく育てられた菫と、異国の血を引く庭師の息子の冬夜。

身分の差を知った上での二人の逢瀬は、微笑ましくもあり切なくもあり、一瞬一瞬とても大切に描かれていて、【白と赤】が重なる静かな情景と二人がリンクして、見惚れてしまいます。

ゆっくりと寄り添い合う前半とは対称的に、ラストに差し掛かるにつれて菫と冬夜に迫る残酷な運命は加速していき、あまりに悲しく切ない結末に呆然。

104ページ、決して目に見えることのない二人の思いが走馬灯のように回想され、心震わせながら次のページに進みました。


全て読み終えたあと、幸せだった二人をもう一度見たくて読み返してしまう程、救いを求めてしまいました……儚いですね。


凄く胸に刻まれる作品です。
ありがとうございました*