麻井深雪
雪化粧の春
春をテーマにした作品では桜が描写に使われることが多いですが、あえて雪景色を持ってきたところで物語をぐっと大人っぽく切ない雰囲気に彩っています。
淡々と書かれる回想が、まるで独白を聞いているようで、切なくノスタルジックな気持ちにさせられました。
読者を自分の世界に連れて行くのが上手な著者さまだな、と感じました。
内容は大人の読みもの。
胸キュン恋愛ものではありません。
結末が想像できてしまう書き方なだけにひたすら切ない空気が漂います。
主人公の行動を止めたくなってしまうような…。
早く気づいて、とそんな気持ちにさせられます。
それだけにラストは温かな気持ちになりました。
途中で挿絵的写真が入っている作品を読んだのは初めてだったんですが、これがまた気持ちを盛り上げてくれました。
切ないお話が好きな人はぜひ。