麻井深雪

恋愛ドラマを観ているような
仕事一筋で頑張ってきても、どんどん男性に先に昇進されていってしまうという切ない待遇を受けている主人公、雅。
女性の社会進出が目覚しい現代社会ですが、こういう閉鎖的な会社もきっとまだ存在するんだろうと改めて思いました。

やるせない気持ちの中で近づいて来る既婚者の元彼。
彼にフラつく気持ちなど、心理描写がほとんどないのに雅の気持ちが伝わってくるのはさすがといった感じです。

三人称で視点は雅で通してあるものの、誰の心情にも沿らずに進むストーリーはまるでドラマを観ているよう。

同じ仕事をしている人間が二人も揃って無断欠勤など、社会人として疑問な展開で、そんなことをしでかして、その後すぐに昇格というのはハッキリいって有り得ないと思ってしまいましたが、大人が読んでドキドキするというテーマにはピッタリのお話でした。

ラストはこれからを予感させるような爽やかさで、恋愛だけじゃなく、雅が社会人として報われたところが良かったです。

松本くんとの距離が微妙なまま終わったのは甘さを求める読者には物足りなかったかもしれませんが、雅のキャラが崩れなかったのも好感が持てました。