八幡シオ

‘精神に潜む闇’に迫る、珠玉の問題作!
まず、ストーリーの展開云々よりも先に、ひたすら主人公りほの思念に深く深く惹き付けられました。

幼くして崇拝していたロックスターの‘死’をきっかけに、彼女の意識は底無し沼の如くソレに対しどっぷりと浸かっていきます。

そしてりほの精神世界に浮上する、闇の存在。

これが、このお話に大きく関わってくるものとなります。

どこまでも彼女に付き纏う闇。

作者様の書く心理描写のあまりの丹念さに、読んでいてガチで引っ張られることもしばしば。

本当にすごいです。


作品の流れとしては、

その日、悲しみを一心に共有したとあるロックバンドとの出会い。
して数年後、再会から始まる新たな物語。

あの日を忘れてしまったかのような周りの反応に、置いてけぼりにされた心。

追い詰める慧に追い詰められるりほ。

そんな彼女の逃げ道となった、自分によく似たコウスケとの逢瀬。依存。堕ちていく二人。


だけどラストでは微かな希望と光が垣間見えるなか、物語は次へと続いてゆきます。


‘死’を見つめる珠玉の問題提起作品。…痺れてください。