久遠マリ

世界と心の狭間で
丁寧で美しい描写に人々の想いが見事に重なる、とても魅力的な作品。
構成も過去の挟み方も見事。

両性具有の主人公が持つ暗い過去と、現在その人が住み暮らすサルマキスの湖畔の景色との、あまりにもかけ離れた二つの世界が物語を素晴らしいものに仕立て上げています。
ギリシャ神話にも出てくるその湖の話を思い出させたり。
そして、いつの間にか、瞼の裏に景色が浮かんでくる。読者はハーフエルフの目線で、ハーフオーガの心で、ドワーフの手で、人間の耳で、全てを体感することが出来ます。個性豊かな登場人物を皆好きになれる。悲しくて、優しすぎる。

そして、その人自身の外見も内面も全て受け入れ、その人として愛することの大切さ。
常日頃から大切に思うべきことですが、この作品はそれを深く胸に刻み付けてくれます。


まさに、今現在人々の心に届けたい物語です。