源義経黄金伝説 第五章 一一八七年 押し寄せる戦雲●鎌倉・奥州大戦

作者飛鳥京香

第五章 一一八七年(文治三年)源頼朝は奥州平泉黄金王国の征服をねらう。そして黄金の行方は?

一片の絵図が、病床の秀衡から義経の手に渡される。

「こ、これは、御館(秀衡)様」

「見ておわかりのとおり、蝦夷の絵図じゃ。この絵図、祖父の代より伝わっておる。いわば藤原家の秘宝じゃ」

蝦夷の一部はすでに平泉王国の勢力圏にふくまれている。

「これをいかにせよと」

「よいか、義経殿。はずかしながら、よいか。我が息子たちが、義経殿を襲うかもしれん。そのときは、この絵図を手にして逃げ延びてくだされ」

「が、しかし…。それは奥州藤原氏、平泉に対する裏切りではありますまいか」

「西行殿とは、北面の武士、佐藤義清の頃より、我々平泉、奥州藤原とはすくなからぬ縁であろう。それにのう、義経殿。残念ながら、後白河法皇様が、とうとう貴公追捕の、院宣を出された」

 義経の顔色が変わっている。裏切られたか、この想いが義経をおそう。