アオイ
短い命の中で一生懸命に生きたチリは、ワガママでも許される魅力的な女の子でした。
本作品は、ヒロインのチリが亡くなるという場面から始まり、主人公・ショウ(彰一)の回想を軸に物語が進んでいきます。
ショウが中~高生時代を思い起こしてゆく部分から、ショウのなあなあな生き方と、それと対照的なケンの生真面目な性格が伝わってきました。
自分のことは自分で決めろ、選択肢があるならちゃんと選べ…というケンの考え方。その強い意思の裏に、チリの体のことを知っていたことが伺えました。読み手にさりげなく気付かせる書き方がそれを色濃く深いものにしていました。
最も印象的だったのは、かつてのケンが嫌っていた「どっちでもいい」というセリフを口にした時と、淡々と日常を生きていたショウの中で、チリとのキスの思い出が綺麗に残っていたとショウ自身が気付いた瞬間です。
読書慣れしていない私でも一日で読み終えてしまったほど引き込まれる、感動するお話でした。
恋愛の意味。命の尊さ。一瞬一瞬を一生懸命に生きることの価値……。様々なテーマが丁寧にすっきりまとめあげられていて、読後感もとても良かったです。元気をもらえるお話でした。