あの日の私に、しおりは挟めない

作者井関和美

不倫をした夫・直之(なおゆき)と家庭内別居をしていた三十三歳の榎並塔子(えなみとうこ)の元へ、
甲斐崎雄一郎(かいざきゆういちろう)という見知らぬ男からの手紙が届く。
手紙には、雄一郎の妻であり、塔子の高校時代のクラスメイトだった旧姓・南詩織(みなみしおり)が病死した事が綴られており、
手紙の最後…

不倫をした夫・直之(なおゆき)と家庭内別居中である三十三歳の榎並塔子(えなみとうこ)の元へ、

甲斐崎雄一郎(かいざきゆういちろう)という見知らぬ男からの手紙が届く。

手紙には、雄一郎の妻であり、塔子の高校時代のクラスメイトだった旧姓・南詩織(みなみしおり)が病死した事が綴られており、

手紙の最後には、もうじき四十九日を迎えるにあたって、妻の遺言を叶えてやりたいので、

ぜひ来訪していただきたいという旨で締めくくられていた。

不貞を疑う直之を伴い、十五年ぶりに帰郷を果たす塔子。

詩織の死に実感を持てぬまま、雄一郎の元を訪れるが、彼女の遺言は塔子と直之を非常に驚かせるものであった……。


(ことのは文庫「泣ける文芸」小説コンテスト参加作品)