★連載36ページ★彼の名前はネイサン。地球人で初めて「タンホイザーゲイト」から帰って来た男。そして今は、山陵王と呼ばれる男。彼はこのゼルシアにある地球自然保護区に往み、ラシュモア山を支配する。
タンホイザーゲイトはこの宇宙の淵といわれ、新宇宙への門であり、ここからは別の世界が始まるといわれていた。30年前、恒星星間船アンバサダー号は送り込まれ、そのアンバサダー号は帰還してきた。しかし乗組員で生き残っていたのはネイサンだけだ。
ネイサンは宇宙省の徹底的な心理分析を受けた。ネイサンの心は空白だった。地球を出発して以降、三〇年間の記憶はまったく残っていなかった。
やがて、彼の存在があきらかになったのは、雑誌に発表された小説からだった。ネイサンの小説は、いわば、言語によるドラッグ。その作品を読んだものは、ネイサンの言語による想像力の爆発に酔いしれた。
宇宙省は、彼を危険人物とみなし抹殺を指令。