さとみなおき
そこに在るということ
ナナは猫です。
壬己という男に飼われています。
絵心は壬己の恋人です。
ナナは壬己と絵心の前に在ります。
人間たちは相手の関心を引こうとしたり、勤めをしていると思いこもうとしたり、自分を上位に置きたがったり下位に置きたがったりしています。
だけどそんな風にして自分の居場所を決めようとしても、それはいつも相対的で不確かに感じられて。
そんな人間たちの前で、何を思う頭もないナナは、ただ、そこに在ります。
希望も絶望もない世界で生きているナナ。
だからこそ、確かに存在しているナナ。
「神などいないといえよう」
だけど私には「もしも神様が存在するのなら、それってナナみたいなものなのかも知れないな」と思ったりもするのです。