心菜りず

わたしと彼女のヒソヒソ花シ

まんまと騙されました。読み始めて何となく喋り方に違和感を覚え、もしかすると“わたし”は彼女たちと同じ年齢の女の子ではなく、例えば身寄りのいないおばあさんなのかな、とか。的外れかもしれないけれど、それでも気付いてやるぞと色々考えながら読み進めていきました。結果、騙されました。

よくよく考えなおすと、お話のタイトルが絶妙に内容を表しているじゃありませんか。ああ、だから『ヒソヒソ花シ』、と。

“わたし”が人ではないという設定だからこそのこの話であり、この感動であるのだと感じます。きっと、最初から最後まで“彼女”が主人公だったらお話の印象はガラリと変わるでしょう。同じ内容で同じ描写で書いたとしても、全く違うお話になっていたでしょう。だからこそ、主人公が“わたし”で良かった。

その設定が、豆雨様の言の葉で紡がれていくのはとてもきれいだと思ったし、とても切ないと思ったし、とても愛おしいと思いました。

生き物は人だけじゃない。生き物は動物だけじゃない。これから迎える春、お散歩ついでに心に留まる花に出会えたら、ヒソヒソ花シをしてみようかな。