キャラクターが生きてる。変な表現だけれど、本作品を読み終えた今、そんな風に思っています。恋を知らない麻生さんも、女の子を信じ切れない永田君も、皆みんな、この瞬間も、私達と同じように時の流れに身を任せて、今日もどこかで歩んでいる気がした。ちょっと官能的な表現もあるのに、少しキャラの抱えている悩みが一般よりかは偏ってる気もするのに、彼らがみんな、私たちの青春だとか恋だとかに対する悩みや不安を全部代弁してくれているみたいで、その葛藤が何だか懐かしくて温かくて愛おしくて。一人一人が魅力的で全然違う個性を持っているのに、全員に私は心揺さぶられて影響を受けて。青春ってこんなに難しくて、痛くて仕方がなくて、でも同時に優しいものなんだっけ、と眠っていた記憶が呼び起こされたみたいな、初々しい気持ちが胸いっぱいに広がった。たしかに作者様がおっしゃるように本作品は綺麗ごとの塊かもしれない。けれど気づいたら、その「綺麗ごと」にどんどん惹かれていて、普段神頼みもしないような私がそれに縋りたい、それを願いたい、と思っていました。
ところで、私的には、麻生さんも永田君もそこそこに屑だと感じました。でも、そんな欠点が人間らしさというか、それさえも愛らしいと思ってしまうまでに、私はこの作品の虜になっています。リズミカルな言葉たちが紡ぎ出された、煌めき溢れた空間も大好きでした。
「全然”それだけ”じゃないよ」
魔法の言葉。ページを捲って、それに出会った時、そんな風に感じました。麻生さんの紡ぎ出したその台詞に、なんだか私まで救われた心地がした。それだけのこと。そう片づけようとした永田君に彼女が伝えたかったのは、
たとえ誰かが「たかがそれだけ」と思うのだとしても、君にとっては、一歩を踏み出せないほどのことだったんでしょ。だから、それだけのこと、なんかじゃない。
そんなメッセージのような気がした。それは同時に、恋愛だけじゃなくて、トラウマだったり辛いことを抱えている人にも響く言葉なんじゃないか、って思ったら涙が込み上げました。もう、自分のことを騙さなくて良いんだよ、強がらなくて良いんだよ、辛いって言って泣いて良いんだよ。そう思わずにはいられない、優しい優しい、心に溶け込む言葉。私も麻生みたいに誰かに希望を与えられる人になりたい。安心できる居場所を作れるような人になりたい。そう強く願わずにはいられませんでした。
誰かが欲しいと思っている言葉を欲しいと思っている時に、紡ぎ出せたら良いな、なんていう、脆くて優しい綺麗ごとが私の胸いっぱいに広がっているのがわかります。
私も青春がしたい! そう大声で叫びたいくらい清々しい気持ちになれた、笑顔を運んでくれた、大好きな本作品。また彼らの想いが誰かのもとへ届きますように。
素敵な作品をありがとうございました