椛本撫子
想像させられる文学
人の蘇生から始まる物語。
そして最後に見える微かな希望の光。
これは蘇り人である“その人”の視点からなる、不思議で奥の深い短編小説です。
この物語ははっきりした終わりがなく、曖昧な形で完結を迎えています。
しかし、その曖昧さが、この物語の不思議さと相まって、物語の味をひきたたせています。
そして、作者様があとがきでも述べているように、作品内に、その人の“心”というものがしっかりと軌跡として残っており、蘇り人の“その人”の思いを強く感じられました。
私は、人の死から始まる物語を何度か読んだことはあったのですが、その蘇りから始まる物語は読んだことがなかったので、この作品は大変興味深いものでした。
9ページというかなり短い短編でしたが、その内容は実に濃く、惹きつけられるものがありました。
プロトタイプ的なお話ということでしたが、その発想力には目を見張るものを感じます。
興味深い作品をありがとうございました。