些細な事故だった。
誰もがそう思っただろう。
―あんな大事故にあって、片目を失っただけなんて、不幸中の幸いだ
本当にその通り。
命があっただけでも良かった。
それなのにどうしてだろう。
その命があると、片目を失ったことが許し難い…
生きている喜びよりも、右目を失った悲しみのほうが勝ってしまうなんて…。