音がした。
やわらかい、風の音。
それは、微かな温もりを連れて
俺の少し早い鼓動を落ちつかせる。
ふいに目をつぶった。
視界に広がる果てしない闇。
でもそれは“孤独”ではない。
だって……
目を開けた。
いつでも光はそこにあるから。
なあ、そうだろ?
「椎雫」
俺がそう呼ぶと、隣にいる彼女は
消えそうなほど切なく笑った。
あの頃俺は、自分の強さしか信じず
まるで感情の無いロボットのように
誰かを傷付けていた。
あの頃椎雫は、誰にも心を開かなかった。
笑う事を、泣く事を忘れ、
ただ言われた事をする操り人形だった。
思い出すたび、傷口をえぐられるような
痛みを覚える。
だけどその痛みこそが
俺達なんだ。
だから行こう。
その先にある未来を知るために――――。
start...