是は、昔々のお話。
人々がまだ自給自足で生きていた時代の頃、日本の何処かに、高く大きく聳える山があった。
名を「鬼山」と呼び、其の山の奥には、紅い瞳の鬼〈由也〉が棲んでいた。
鬼は、旅人を襲い、生き血を喰らうだとか、
とても美しく、見たものを長い爪で引き裂き殺してしまうだとか、
色々と風説が立っており、風説を信じる信仰心の強いこの頃の人々は、決して山には近づこうとはしなかった。
だが、風説は所詮風説でしかない。
鬼と恐れられていた由也も、本当は私達と何ら変わり無い人間として生きる筈だったのだ。
何故、その由也も、鬼として生きる道を歩んでしまったのか・・・・
今からほんの少し、その夢を語りたいと思う。
ようこそ、妄想人の世界へ。
人を愛する事を切なく綴った美しい夢へ皆様と共に旅立つとしよう――――・・・・