「大館行き最終が発車します」


国鉄の東北本線盛岡駅から発車し好摩駅から分岐される花輪線は全長69km、標高879mの線路である。


力強く響き聞かせるディーゼルの音は深い谷や峠の中でこだまする。


冬ともなれば、身を刺すような寒さと深い豪雪の中を車体を震わせながら走り抜けるのである。


その険しい路線の終点が大館駅である。


ホームに激しく発車を知らせるベルが耳に響く。


振り向くと、盛岡発キハ58系最終の大館行き快速が発車しようとしていた。


その重くゆっくりとしたクリーム色と赤のツートン色のディーゼル汽車は、これから深い雪の中を目指して終点大館まで走り出そうとしていた。