小泉秋歩
多重人格者の恋
主人公・宏人は「宏美」という女性の人格を有する多重人格者。そのため社会に適応できず、自殺願望にとらわれている。
そんな宏美が、「キリト」という不思議な人物に出会う。
なんと、キリト自身も「霧子」という女性が持つ別人格なのだ。
身体は男で心は女の宏美。
身体は女で心は男のキリト。
不思議な運命で巡り合った彼ら「偽の人格」同士は、恋に落ちる。
そして彼らは、本体同士(宏人と霧子)をくっつけちゃえばいいじゃん、と思いつくのだが――
解離性同一性障害(いわゆる多重人格)をモチーフにした恋愛サスペンス。
「2つの人格による一人称小説」という複雑な構成ですが、口調や性格の違いなどで明確に区切られていて、違和感なくスムーズに読み進められます。
また、それぞれのキャラクターがイキイキとしています。特にキリトと宏美は魅力的。
また、堅物の委員長・氷室舞香という第三者の存在が、物語に奥行きを与えています。
後半には、思いもよらぬ深刻な事態に発展し、息詰まるサスペンスが展開されます。
過酷な過去を背負った多重人格者たちの恋と行く末を存分にお楽しみください!