オルゴールの音色に僕は耳を傾ける。
奏でられる曲の名は「記憶」。
いかにも僕らにふさわしいタイトルだ。
昔々その昔、僕らは哀しい恋をした。
いや、正確には「僕の中の人格」が恋をした。
そう表現するべきだろう。
僕はいわゆる多重人格だった。
相手も、僕と同じようなものだった。
僕の中の人格と相手のなかの人格が恋に落ちた。
なんて滑稽な物語。
これは、偽物の人間同士の、滑稽な恋物語。
僕の中に閉じこめられた少女。
少女のなかに閉じこめられた少年。
二人の人格の恋から始まる、これはそんな物語。
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二ヶ月かかりましたがようやく完結しました。
ご愛読して下さった皆様、本当にありがとう
ございました。