いまこの瞬間を尖ったナイフで切り取って、美しいまま記憶の底に凍らせようとした。氷でこさえたタイムカプセルはプリズムのように光を屈折させて君の色を映し出した。


思い出は

美しいというから

いまこの瞬間を

尖ったナイフで切り取って美しいまま

記憶の底に

凍結させようとした




透き通った

氷でこさえた

タイムカプセルは

プリズムのように

光を屈折させて

君の色を映し出した




その輝きに

耐えかねて

僕はサングラスを重ねて

ようやく

光を正視できたのに




何時しか光は消えて

漆黒の闇の中に

放り出されていた




迷走する思考

屈曲する感情を

押し殺して

顔を上げた時には

全ては過去へと

押し流されていて




視界に残るものは

何時か僕が差し出した

バラの花束の

枯れはてた

姿だけだった