しき
耳で恋をする
女性は男性の声に惹かれる。
耳で恋をする。
――と誰かから聞いたことがある。
人気のない旧校舎。
第一音楽室から聞こえてくる澄んだ歌声と優しいピアノの音。
はじめ主人公はピアノの腕にちょっと自信があり、対抗心からその歌に興味を持つ。けれど次第に声に魅了され、毎日のようにそこに通うようになる。
話してみたい。
一緒に音を奏でてみたい!
彼に興味を持っていく。
でも学祭のライブではじめて彼と対面するとき、彼の正体と名前を知ってしまうことに一瞬後悔の念がよぎる。
この場面に揺れる女の心を感じた。
そして”女性は~耳で恋をする”というフレーズを思い出した。
音楽をキーに進んでいく二人の恋。
作中に織り込まれているskyという曲や音楽を表す表現がすごくきれいで、本来音は言葉では表現しにくいものなのに、自然と音が耳に聞こえてくるような気がした。
ただ物語の主軸ともいうべきskyという曲が物語に活かしきれていないのがとても残念。
なぜ歌ではなく”空”なのか。
そのエピソードがあったらもっとよかったと思う。